2011年1月9日日曜日

坂本龍一ソロコンサートがUstreamでライブ配信されたことの意義

坂本龍一(@skmt09 @skmt56)の韓国ソウルでのソロコンサートの模様が、リハーサルの模様を含めてUstreamで配信された(夜の部もこれから配信されるらしい)。
午前中の調律の様子から流れていたので(流したのはデジタルステージの平野さん @dsHirano)、私もずっと見ていた。
見ながら、いろいろかんがえていた。

コンサートホールとかライブハウスといった「箱」がなんのためにあるかというと、「料金徴収所」としての機能である。
音楽に限らず、サーカスもカーレースも野球もスケートリンクも、入口で料金を払ったものだけが中にはいれるようになっている(あらかじめチケットを購入しておくことも含め)。
美術館や映画館もそうだ。
前にも何度か書いたが、なにか見たいものがあって、それが商業的なものであれ文化的なものであれ、お金を払わなければ入れない「箱のなか」にある場合、お金を払えない人はそれを見ることはできない。
音楽や美術といった文化的なものが、「お金がない」ことを理由に享受できない人が出てきてしまう。たとえば子どもとか。このことにたいして、このところずっと違和感をおぼえていた。
とはいえ、パフォーマーは生活しなければならないし、「箱」を使うにも経費が必要だ。スタッフの人件費もあるだろう。どこかからお金を徴収しなければならない。
というジレンマがあった。

今回の坂本龍一のコンサートは、私も家にいながらにしてコンピューターをネットにつなぎ、別に料金を払うこともなく、高音質・良画質で見ていた。
これは大晦日のベートーベン交響曲全曲演奏会もそうだった。
おなじように見ていた人は15,000人くらいいた。
もちろん音楽なのだからライブ会場で直接聴くのがもっともリッチな体験にはちがいないが、15,000人の人が同時に、居ながらにしてライブコンサートを聴くことができる。しかも、チャットのようにどんどん感想を書きこみ、それを共有することができる。
コンサート会場で感想をいいあえば、「うるさい」としかられてしまうだろうが、Ustream上でならいくらつぶやいてもしかられない。そして、坂本龍一のパフォーマンスにたいする惜しみない賞賛の声が、タイムラインを埋めつくしていった。
これはプレーヤーにはうれしいことだろう。

これを見ていて、あたらしいライブ音楽の発信方法がひとつ生まれた、と思った。
音楽の世界ではCDという媒体がほぼ死に瀕しているが、ネットライブ配信というチャンネルがあらたに生まれた。
CDのように確実に料金を徴収することができないので、このチャンネルをどのようにパフォーマーの収益につなげていくかはまだ不透明だが、大きな可能性はあると思う。なにより、だれもが無料でライブにアクセスできるのがいい。お金を払って箱にはいらなくても聴けるのだ。
坂本龍一はメジャーな音楽家だが、現代音楽やジャズ、朗読といったマイナーなパフォーマーにとって、これは今後福音になっていく可能性があると思う。15,000人も見てくれなくても、たとえば10人とか20人、100人とか200人が見てくれればいい、という人もいるだろう。
Ustreamを使ったライブ配信を、私ももうすこしまじめにかんがえてみることにする。