2011年7月15日金曜日

東京乾電池アトリエ公演「授業」を観た

下北沢にある劇団「東京乾電池」(ボスは柄本明さん)のアトリエ公演に行ってきた。
アトリエは柄本さんの自宅の地下にあるもので、こじんまりしているが、アトリエであると同時に小劇場の風情もあって、よか。
公演はイヨネスクの「授業」という演目で、これは1960年だか61年だかにパリで初演され、今日現在にいたるまでパリではまだ毎日公演がつづけられているという名作。それを柄本明さんが東京乾電池の味つけで上演した。

主役の先生役はもちろん柄本明さんだが、相手役の女生徒役をわれらが石村みかが務めるというので、げろきょからも大挙して観劇に出かけた。
この芝居のキモは、シャイでもじもじと小声と猫背で出てくる教師と、元気でかなり不思議ちゃんな女生徒が、序盤から不気味な爆発の予感をにおわせつつ、中盤から予感どおり一気に爆発し、怒濤のようなセリフと暴力が吹き荒れていく展開にある。
さすがに柄本さん。そこはベテランらしく、恐ろしいほどに過剰なセリフを絨毯爆撃のように石村みかと観客に浴びせたおし、圧倒する。もはやセリフはなにをいっているのかすらわからず、もしわかったとしてもどうせ理不尽で不条理なへりくつであり、もともとイヨネスクがストーリー性やセリフの意味性を排除し役者の存在そのものを浮き立たせるために作った脚本であるのは明らかで、そのとおり、狭いステージをところ狭しと動きまわる柄本明と、「歯が痛い、歯が痛い」と訴えつづける石村みかの身体性が、強烈なまでに観客の前に投げだされるのだった。

最初に登場する際の柄本さんの芝居が、明らかに中盤以降との強烈な対比を狙ったものであってやや記号的だ、とか、石村みかはもっとすんごい身体性を持っているんだぞそのポテンシャルをあまり出しきれていない、とか、いくつか惜しいと感じた点はあったけれど、「狭いよーお尻痛いよー腰も痛いよー」という劣悪な観客環境にも関わらず最後まで集中を切らすことなく観ることができたのは、さすがであった。
楽しませていただきましたよ、柄本さん、石村みかさん。