2012年9月3日月曜日

へしこ文化圏考

このところ毎日、「へしこ」を食している。
「へしこ」というと、「それなに?」という反応が多く返ってくる。
無理もない、地域限定の食べ物だから。

へしこは鯖やイワシ、イカ、フグなどを塩と糠に漬けこんで、発酵させた保存食だ。
私は福井生まれなので、子どものころからごく自然に食べていた。
もっとも、福井では「へしこ」という呼称は少なく、イワシの糠漬けが主流で「こんかいわし」といっていた。
「こんか」は「こめぬか」のことだ。

正確に調査したわけではないが、いろいろと聞き及んでみたところでは、「へしこ」という呼称は若狭以西で存在するようだ。
正確には敦賀湾以西。
若狭という地域は、福井県の敦賀市以西を指すが、敦賀湾は敦賀市より東の河野村などを含む。
若狭と呼称される地域より少し越前に食いこんだ場所から、へしこという呼称が発生しているように思える。

若狭、丹後(京都北部)、但馬(兵庫北部)、鳥取あたりまでへしこという呼称が存在し、それは鯖が主流になっている。
鳥取より西の島根や山口までへしこが存在するのかどうかは、私は知らない。
もし知っている人がいたら、教えてほしい。

ともあれ、これほどうまいものはない。
へしこを知らない人に食べさせると、ほぼ100パーセントの確率で、
「なにこれ、しょっぱすぎる」
という反応が返ってくる。
そのたびに、私はとても残念な気持ちになる。
知らない人は一度にたくさん食べすぎてしまうのだ。

へしこはうまみが凝縮されているので、とても少ない分量でも味わえる。
たくさん食べてしまうと塩味が勝ちすぎてしまって、本当のうまみがわからなくなってしまう。
そのことをわきまえていただけば、びっくりするほどのさまざまなうまみが凝縮された食品であることがわかる。
食べ方の指導者が必要かもしれない(冗談ですよ)。

このへしこ文化は、逆に東にはどのあたりまで広がっているのだろう。
福井の越前地方では、へしこではなく「こんかいわし」という呼称が大勢を占めている(ように感じる)。
加賀では「へしこ」という言葉を知らない人が多い。
富山の人が「こんかいわし」を知っていたということがあったので、ひょっとして越前、加賀、能登、越中あたりまで「こんかいわし」かもしれない。

では、越後・新潟のほうに行くとどうなるのだろう。
それについては私はまったく知識はない。
だれか教えていただけるとうれしい。

いずれにしても、私が「へしこ文化」をこよなく愛する者であることは、生涯変わりないことだろう。