2013年2月14日木曜日

内田樹『街場の文体論』

文体論とかクリエイティブ・ライティングとかいいながら、文章の書き方についてはあまり出てこない。相変わらず構造主義などを中心にしたフランス現代思想のかみくだいた解説と、それを適用した日本社会の読み方が、内田独特の語り口で語られていて、おもしろいといえばおもしろい。
しかし「街場」シリーズのなかではかなりジャンルが限られていて、私のような物書きはおもしろがれたけれど、これを一般読者がどこまでおもしろがれるかは疑問だ。
ま、そんなことは余計なお世話だろうが。

「生き延びるためのリテラシー」という項でこんなことが書いてあっておもしろかった。
なにか問題を提起されたとき、「あなたはそう問うことによってなにが知りたいのか」という逆の問いを立てられるかどうかが重要という。

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 自分自身を含む風景を、いわば「鳥瞰的に」見下ろすような視野の広さが求められ。
「僕はいったいここで何をしているのか?」というような反省する力、一歩ステップバックして、少し遠い目をして、自分が参加しているゲームの成り立ちやルールを考察する能力、これは汎用性の高い知力だと思います。「使える」知恵です。
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なるほど、これは物書きには必要な資質かもしれない。
「遠い目をする能力」を育てる方法は現代教育制度のなかではかなり失われてしまっているような気がする。