2013年8月3日土曜日

座・高円寺でてがみ座の「空のハモニカ」を観てきた

てがみ座公演「空のハモニカ」を〈座・高円寺〉で観てきた。
なかなかいい小屋ではないか。
こういうところで現代朗読公演をやってみたいものだ。
が、いまの我々に200人とか300人という集客はむずかしい。

「空のハモニカ」は実は前回の公演のときに観ている。
前回は下北沢の〈劇・小劇場〉だった。

てがみ座という劇団はよく存知あげないが、「空のハモニカ」は主演に石村みかが出ている。
彼女は「特殊相対性の女」の初演時に出演してくれた女優で、東京では下北沢の〈Com.Cafe 音倉〉、名古屋では愛知県芸術劇場で野々宮卯妙と共演してくれた。
「空のハモニカ」では金子みすず役として出ている。
そして演出は扇田拓也。

彼は学生時代から〈ヒンドゥー五千回〉というふざけた名前の劇団をやっていて、その劇も実にふざけた、しかし実験的なものだ。
そこで扇田くんは脚本をてがけ、出演もしている。
ほかの劇団からも呼ばれる役者でもあるし、テレビCM(最近ではキリンの一番絞り)にも出る俳優でもあるが、演出家としてもさえている。
「空のハモニカ」では非常に緻密で繊細な演出で辛抱強く舞台を作りあげ、それがそのまま観客に伝わってくるようだった。
お客さんの多くが石村みか演じる金子みすずに感情移入し、涙を誘われていた。

役者陣もなかなか表現力が豊かで、とくに戦前の着物を着た日本人の身体性をたくみに身につけていた。
石村みかもすごくて、脊椎の曲げのばしで、しかもほんの1センチとか2センチといった微妙な身体運用で、みすずの感情表現をおこなっていたのにはおどろかされた。
これだけの繊細な身体運用ができる役者を、私は数えるほどしか知らない。


その扇田くんと三週間後に演劇と朗読についての合同ワークショップをやることになっている。
タイトルは「物語と自我」。
もちろん私と扇田くんの演出の方法はまったくちがう。
正反対といってもいい。
それゆえにこそ、そこにいまの演劇と朗読の問題点と可能性があぶりだされてくるのではないかとかんがえている。

扇田くんは緻密かつ繊細に、注意深く舞台を詰めていく人。
一方私は多くを偶然性にまかせ、即興的に舞台を開いていく者。
それぞれの方法を体験できる刺激的なワークショップになるだろう。
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そして「空のハモニカ」はまだ今日と明日の二日間の公演を残している。
お時間がある方はぜひ高円寺まで足をお運びいただくことをおすすめする。
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