2015年10月29日木曜日

終了:10月の「沈黙[朗読X音楽]瞑想」公演

2015年10月28日、夜。
明大前〈キッド・アイラック・アート・ホール〉のギャラリースペースにて、ほぼ毎月恒例で開催している「沈黙[朗読X音楽]瞑想」公演をおこなった。

このところ、この公演のために新作テキストを書きおろすことがつづいている。
今回も公演日の二日前に新作テキスト「待つ」が書きあがり、朗読の野々宮卯妙に渡すことができた。
いつもぎりぎりになって申し訳ないと思うが、これも朗読者への信頼があって成り立っていることだと思う。
あらためて感謝したい。

この日読まれた新作テキスト「待つ」は、「水色文庫」に公開したので、お読みいただければ幸いである。
こちらからどうぞ。

19時半開場、20時開演。
今回はギャラリースペースに作品展示がなく、壁面は真っ黒に塗られたコンクリート打ちっ放しという、いつもの雰囲気といえばそうなのだが、ギャラリー空間としてはかなり異質なものである。
まさにこの公演のためにあるような空間で——というより、この空間があってこの公演内容が決まったといってもいいようなものだ。
ピアノがあって、鳴らせば音響空間としても非常に特異であることがすぐにわかる。

この公演も今回で8回めとなったが、私はこの音響特性に苦労しつつ、楽しみながら、演奏法を工夫してきた。
いわばじゃじゃ馬のようなこの空間を、ようやくすこし乗りこなせるようになった気がする。

今回も参加者は少人数で、とても静かに始まった。
野々宮の朗読に、私はなるべく音数を減らしてからみ、ぎりぎりの緊迫したコミュニケーションを試みる。
前半の終わりで朗読が沈黙に向かい、最後に完全に沈黙がおとずれたとき、いつもなら頭で計算して沈黙を長く引っぱるのだが、今回は私の身体が音を聴きたがっていた。

割合短めの沈黙のあと、私はピアノを再開し、後半の音楽瞑想へとはいっていったのだが、出てきたのはマイナーキーではじまる演奏だった。
私にしてはとてもめずらしい。
メジャーキー、もしくはどちらとも取れないペントニックからスタートすることが多いのだが、マイナーキーで音楽瞑想にはいったのは初めてのような気がする。

自分がどこに行くのか、なにが出てくるのかわからないまま、深くて濃いマインドフルネスとフローの世界にはいった。
覚えのある感覚だが、時間の進み方が独特になり、音の聴こえ方や身体の感覚が変わる。
コンデンスミルクのなかを泳ぎ歩いているようなねっとりした感覚がつづく。

どのくらい時間がたったのかわからないが、なんとなく必然的な流れで演奏が収束に向かったとき、なぜだかいつもより演奏時間が短いような気がした。
実際にはいつもより3分ほど短い演奏となった。

今回もおもしろい体験だった。
このような体験の場を成立させ、共有してくれたご来場の皆さんと、ホールの早川くん、工藤くんには感謝したい。

次回はどうなるのか。
やはり新作テキストを書きおろして臨みたいと思っている。
次回のこの公演は、11月はお休みで、12月11日(金)夜の開催となります。
詳細と申し込みはこちらからどうぞ。