2016年10月9日日曜日

音楽:アンネ・ソフィー・フォン・オッター&ブラッド・メルドー「Love Songs」

ひさしぶりに音楽CDのレビューを書きます。
そういえば、10年くらい前、FMラジオでジャズ番組を作っていたときは、毎日たくさんのCDを聴いて、たくさんのレビューを書いていたなあ。
ということを思いだしたりしてますが、音楽のレビューを書くのは本当にひさしぶりです。

とはいっても、全然音楽を聴いていないわけではありません。
昔ほど浴びるようには聴かなくなっているし、ジャンルもジャズにかぎらずさまざまなものを聴くようになっていますが、聴かない日はありません。
自分が演奏する日もありますけどね。

今回、iTunesでなにげなく聴きはじめたアルバムがあまりによかったので、きゅうに書きたくなったのです。

クラシック界のアンネ・ゾフィー・フォン・オッター(ソプラノ)という歌い手と、ジャズピアニストのブラッド・メルドーのデュオアルバムです。
フォン・オッターは私がふだんから聴くような人ではありませんが(そもそもあまりボーカルは聴かない)、ブラッド・メルドーはそのデビュー当時から大ファンでした。

ジャズという枠におさまりきれない音楽性と、もちろん即興音楽ではあるんだけど、天才的なひらめきとたしかなテクニックに裏付けされた斬新なものです。
そういう意味では、キース・ジャレットやゴンサロ・ルバルカバといったバーチュオーゾもいるんですが、メルドーの特徴はその複雑さといっていいでしょう。
ときに心地よさだけを求める聴き手を拒絶するような毒のある緊張感をぶつけてくることがあります。
一瞬、だれもが持っている生命の闇の部分を垣間見るような気がして、ぞっとします。
そこがいいのです。

そのアルバムでは、前半がメルドーのオリジナル曲、後半がフォン・オッターが選んだ世界のさまざまな名曲、という構成になっています。
そのオリジナル曲のおもしろいこと。
もちろんアルバムなので、ある一定の色合いにまとめられてはいるんですが、これはなんといっていい音楽なんだろう、やはりブラッド・メルドーの音楽としかいいようのない音作りなんですね。
そこにフォン・オッターという深みのある歌い手が、深々とした、しかし十分に抑制された情感を乗せて語っていく。

後半のさまざまな曲も楽しいです。
ジョニ・ミッチェルやビートルズの曲もあれば、ミシェル・ルグランやシャンソンの曲もあります。
ここでもメルドーは一筋縄ではいかないアレンジでピアノをつけています。

すごいなー。
私もこういう音楽をやれるようになりたい。
こういう音、という意味ではなく、既成の音楽の枠組みを慎重に、丁寧にはずしていって、そこに残った自分の身体から響いてきた本当にオリジナルな音だけで作る音楽。
いつかそのような音が出せるようになったらいいなと、いま、切実に思います。

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