2016年12月11日日曜日

明大前の老舗シアター・キッドの閉館を惜しむ

明大前の最老舗小劇場〈キッド・アイラック・アート・ホール〉の年内いっぱいでの閉館が発表されたとき、私を含む多くの人がショックを受けました。
演劇はもちろん、音楽、美術、ダンス、その他さまざまな表現活動の、いわば「前衛」として存在しつづけてきたホールがなくなってしまうというのは、大きな影響もあります。

私がキッドを使わせてもらうようになったのは最近のことで、その長い歴史とはあまり関わっていないんですが、それでも自分なりに思いいれがあります。
キッドのホールでは現代朗読の公式公演「キッズ・イン・ザ・ダーク」を4回おこなったほか、カルメン・マキさんやキム・ウイシンさん、榊原忠美氏、野々宮卯妙氏らとの自主公演をやってきました。
音楽、ダンス、美術、朗読と組んだ、自分なりに実験的に攻めたアバンギャルドな表現もありました。

もっとも、キッドとの関わりは最初はホールではなく、その地下にあるブックカフェ〈槐多〉でした。
2012年からほぼ毎月のように現代朗読の野々宮卯妙と組んでおこなった、沈黙の朗読シリーズの「槐多朗読」が、私とキッドの関わりの最初でした。
そのあと、ホール公演もおこなうようになったのです。

そして2015年からは3階(と4階まで吹き抜け)のギャラリースペースを借りての「沈黙[朗読X音楽]瞑想」公演がスタートしました。
ギャラリーにアップライトのピアノが設置されたのを機に、こちら、前半が朗読と音楽のセッション、後半が音楽演奏による瞑想というプログラムをはじめたのです。

これは私にとって、そして共演者の野々宮にとっても重要なコンテンツとなりました。
私にとっては長年のチャレンジとしてつづけてきた沈黙の朗読と音楽瞑想それぞれのさらなる追求と、そしてテキスト表現にチャレンジも含まれています。
最初のころは夏目漱石や槐多のテキストを使っていましたが、2015年末から2016年にかけてはほぼすべてが新作テキストでやっています。
毎回、自分にとって、テキスト表現の挑戦として書いています。

今回の公演が私にとって、キッドでの最終公演となります。
そのための新作テキストを準備中です。
キッドなきあと、この公演がどうなるかはわかりません。
どこかキッドに代わる場が見つかるといいんですが。

「沈黙[朗読X音楽]瞑想」公演@明大前(12.12)
深くことば、静寂、音、そして空間とご自分の存在そのものをあじわっていただく「体験」型公演です。年内閉館が決まっているキッド・アイラック・アート・ホールでの最終公演となります。